「この家、いいね!」
「でも、ちょっと予算オーバーじゃない?」
住宅展示場で素敵なモデルハウスに一目惚れした夫婦。
広いリビングに、憧れのアイランドキッチン。子どもたちが走り回れる庭もある。
こんな家に住めたら、毎日が楽しいだろうなぁ。
ところが、住宅会社の担当者に見積もりを出してもらうと、予算を大幅にオーバー。
やっぱり無理か……。
と諦めかけたところで、担当者からこんな提案が。
「奥様もお仕事をされているなら、ペアローンという方法がありますよ!」
ペアローン?
話を聞いてみると、夫婦それぞれが住宅ローンを借りることで、借入可能額を増やせるというのです。
えっ、それなら憧れのマイホームが建てられるじゃない!
こうして夫婦は、4,000万円のペアローンを組むことにしました。
夫が2,500万円、妻が1,500万円。
二人で力を合わせて返していけば大丈夫。
そう信じて、夢のマイホーム生活が始まったのです。
10年後、まさかの事態が発生!
あれから10年。
子どもたちも大きくなり、住宅ローンの返済も順調。
……だったのですが。
夫の不倫が発覚!
夫は家に戻ってこなくなり、散々揉めた末に離婚することになりました。
「これからは子どもたちと3人で頑張っていこう!」
そう決意した矢先、元夫から信じられない言葉が飛び出します。
「俺、もうあの家に住んでないんだから、住宅ローン払わなくていいよね?」
……は💢?
いやいやいや。
あなたが浮気して出ていったんでしょうが!!
しかも、家を買うときには「二人で頑張って返していこうね」なんて言ってたはずなのに。
ところが、元夫は本当に住宅ローンの返済をストップ。
離婚時点で残っていた住宅ローンは、
元夫:1,900万円
妻:1,100万円
合計3,000万円。
妻は自分の住宅ローンを毎月きちんと返済していましたが、
ところが、元夫の返済が滞ったことで、銀行から思いもよらない連絡が入ります。
「元ご主人の住宅ローンについて、お支払いをお願いします」
えっ!?
私はちゃんと自分のローンを払っているのに!?
なんで元夫の分まで!?
ペアローンでは夫婦がお互いの住宅ローンの連帯保証人になっていることがあり、
このケースでも、妻は夫のローンの連帯保証人になっていたのです。
つまり、元夫が返済できなければ、妻にも返済を求められる可能性があるということ。
さらに、住宅ローンの滞納が解消されなければ、最悪の場合、住宅が競売にかけられる可能性まであります。
浮気した夫が出ていっただけでも腹立たしいのに、
夫のローンまで請求されて、住む家まで失うかもしれないなんて……。
こんなこと、家を買ったときには想像もしなかったでしょう。
(※ここまでの夫婦のエピソードは一つの事例です。実際の連帯保証や請求の条件は契約内容によって異なります。)
だったら、家を売っちゃえばいいじゃない!
「そんな面倒なことになるなら、もう家を売ってしまいたい!」
そう思うのも無理はありません。
実際、離婚時には家を売却して、住宅ローンを清算する方法もあります。
ただし、ここにも落とし穴が。
先ほどの夫婦は、住宅ローンの残高が3,000万円ありました。
この家が3,500万円で売れるなら、ローンを返済しても500万円残ります。
もちろん、実際には仲介手数料などがかかりますが、残ったお金は財産分与の対象になります。
ところが、もし2,500万円でしか売れなかったら?
家を売っても、500万円の借金が残ってしまう計算です。
通常の売却では、住宅ローンを完済して抵当権を抹消する必要があります。
不足する500万円と売却費用を用意できなければ、金融機関と相談しなければなりません。
「ローンは払いたくない。でも家は勝手に売るな」
離婚するだけでも大変なのに、住宅ローンのせいで元夫との話し合いが終わらない。
こんな事態も考えられます。
そもそも、ペアローンって悪いものなの?
ここまで読むと、
「やっぱりペアローンなんて組まない方がいいじゃない!」
と思ってしまうかもしれません。
でも、ペアローンそのものが悪いわけではありません。
実際、夫婦でペアローンを組むことには、大きなメリットもあるのです。
例えば、夫の年収が500万円、妻の年収が400万円だったとしましょう。
夫一人の収入では希望する金額の住宅ローンを借りられなくても、夫婦それぞれが借り入れることで、希望する住宅を購入できる可能性があります。
さらに、条件を満たせば夫婦それぞれが住宅ローン控除を受けられるため、単独ローンよりも減税効果が大きくなることも。
また、夫婦それぞれが団体信用生命保険(団信)に加入できることもメリットです。
一般的な団信では、加入者が死亡するなど所定の状態になった場合、その人の住宅ローン残高が保障されます。
夫婦のどちらかに万が一のことがあった場合、
二人分のローン残高がゼロになる「ペアローン連生団信」という商品も登場しています。
これなら、万が一のときも安心できそうですよね。
ただし、保障には条件があり、商品によっては金利の上乗せも必要です。
そして、ここからが重要です。
死亡には備えられても、育休には備えられない!?
夫婦で住宅ローンを組むとき、考えておきたいのが、将来の働き方の変化です。
例えば、こんな夫婦がいたとします。
夫「二人で働いていれば、月々の返済も余裕だね!」
妻「そうだね!私も仕事を続けるつもりだし!」
ところが数年後、子どもが生まれました。
妻は育児休業を取得し、復職後もしばらくは時短勤務をすることに。
以前と比べて収入が減ってしまいました。
でも、住宅ローンの返済額は変わりません。
育休で収入が減っても、住宅ローンの返済義務がなくなるわけではありません。
そして、団信も育休による収入減少は保障してくれません。
銀行によっては育休中の返済額を一時的に減らせるサービスもあります。
もっとも、これは住宅ローンを免除してくれる制度ではなく、返済を先延ばしにする仕組みです。
育休が終わっても時短勤務が続いたら? 二人目、三人目の子どもが生まれたら?
住宅ローンは長い付き合いなので、今の収入だけでなく、これからの働き方も考えておきたいですね。
病気で休職した場合も同様です。
例えば、うつ病で仕事を休むことになっても、それだけで通常の団信が適用されるわけではありません。
所定の障害状態や就業不能状態などが保障される商品もありますが、保障条件は商品ごとに異なります。
つまり、夫婦二人の収入を前提に住宅ローンを組んでしまうと、どちらかの収入が減った途端に家計が苦しくなる可能性があるということ。
夫婦が仲良しでも、返済に困ることはあり得るのです。
ペアローンの本当の落とし穴は「借りられる金額が増えること」かもしれない
ここで、最初の住宅展示場の話に戻ってみましょう。
希望するマイホームは、夫一人の住宅ローンでは予算オーバーでした。
ところが、妻の収入を合わせたら借りられる金額が増えた。
「これなら建てられる!」と思ったわけです。
でも、ちょっと考えてみてください。
借りられる金額が増えたからといって、余裕を持って返済できる金額まで増えたのでしょうか?
銀行が審査するのは、主に借入時の収入や返済能力です。
これから子どもが何人生まれるか。
どちらかが仕事を辞めることになるか。
将来、夫婦関係がどうなるか。
そんなことまでは、わかりません。
もちろん、夫婦で協力して働き続け、無理なく返済している家庭もたくさんあるでしょう。
ペアローンが適している家庭もあります。
ただ、夫婦二人の収入がなければ返済できないほど住宅購入費用を膨らませるのは、慎重に考えたいところです。
そして、もう一つ。
そもそも、収入が落ちた時に困るほどの家を建てる必要があるのでしょうか?
ペアローンを組む前に、ちょっとだけ家の予算を見直してみよう
例えば、希望する住宅の見積もりが4,500万円だったとします。
「あと500万円足りない……」
そこでペアローンを検討するのも一つの方法ですが…
ペアローンを組む前に、もう一社だけ聞いてみない?
4,500万円の見積もりを前に、
「やっぱりペアローンにするしかないか……」
でも、ちょっと待ってください!
その4,500万円って、本当に4,500万円じゃないと建てられない家なんでしょうか?
住宅会社が変われば、間取りの考え方も、得意な工法も、標準仕様も違います。
同じ希望を伝えたつもりでも、出てくるプランや見積もりは結構違うもの。
例えば、ある会社では予算オーバーだった間取りが、別の会社では廊下を減らしたり、建物の形を工夫したりすることで、予算に近づくかもしれません。
「えっ、そんな方法もあったの?」
なんて提案が出てくる可能性だってあります。
……とはいえ。
また住宅展示場に行って、アンケートを書いて、営業担当者に希望を説明して。
しかも、帰ってきたら電話がかかってきたりして。
正直、ちょっと面倒くさい。
だったら、まずは自宅で何社かに希望を伝えてみるのも手です。
例えば「タウンライフ家づくり」なら、希望する間取りや予算をまとめて入力して、複数の住宅会社にプランを依頼できます。
無料で利用できるので、いきなり展示場を何軒も回る前に、どんな提案が出てくるか見てみるのもいいかもしれません。
もちろん、住宅会社によって提案内容は違いますし、電話やメールで連絡が来ることもあります。
でも、最初に提示された見積もりが予算オーバーだったからといって、すぐに住宅ローンを増やす必要はないはずです。
借金を1,000万円増やす方法を考える前に、家の値段を見直す方法を考えてみませんか?
家は家族を幸せにするために建てるもの
素敵なマイホームが欲しい。
家族みんなで楽しく暮らしたい。
そんな気持ちで始めた家づくりなのに、住宅ローンの返済に追われ、毎月の生活が苦しくなってしまったら……。
何のために家を建てたのかわからなくなってしまいますよね。
ペアローンには、借入可能額を増やせることや、夫婦それぞれが住宅ローン控除を受けられることなど、確かなメリットがあります。
一方で、育休や退職、病気、そして離婚など、将来の生活が変化したときのリスクも考えておかなければなりません。
家づくりで大切なのは、銀行からいくら借りられるかではなく、自分たちがいくらなら安心して返していけるか。
憧れの設備や広いリビングも素敵ですが、毎月の支払いに追われず、家族で笑って暮らせることも同じくらい大切だと思います。
住宅ローンを増やす前に、まずは家の予算を見直してみる。
そのための第一歩として、複数の住宅会社から提案を取り寄せてみてはいかがでしょうか。
家族の幸せを願って建てる家が、家族の負担にならないように。
そんな家づくりを目指したいですね!